ZOOM 2020 ビンテージマルチの再レビュー
過去にもこのZOOM2020を扱った記事があったのですが、また手元に戻ってくる機会があったので再度レビューの方をしていきたいと思います。
zoom playerシリーズとは?
zoom は時期によってマルチエフェクターのシリーズが存在します。
playerシリーズはフロアタイプのマルチエフェクターの中では最初初期のシリーズで、その後GFXシリーズやGシリーズ、Gnシリーズなどに取って代わっていきます。2020はplayerシリーズの一つで他に1010、3030、4040、8080、2100、3000などがあります。
ちなみに2020はそのシリーズの中でも最初期に販売されていたモデルで、ZOOMの初フロアタイプマルチエフェクターになります。(エフェクター自体は9002が最初期みたいです。)
1010、2020、3030、4040、8080に共通して言えるのが、コンプレッサーと歪み系エフェクトにアナログ回路が採用されている点でしょうか。
今日のマルチエフェクターはそのデジタル技術の革新により、一昔前までは表現しきれなかったアンプやアナログエフェクターの空気感やニュアンスなども上手く表現できるようになってきています。
ですが、少なくとも今現在ではそのサウンドは本物と全く同じor超える事はないようです。
それらと比べてかなり昔の製品である2020は当時のデジタル技術では歪みエフェクトの再現が難しく、歪みの回路はあえてアナログ回路を採用している点が今現在のシーンにおいても一種のアドバンテージになっていると思います。
zoom 2020のスペック
エフェクトは5系統のカテゴリーに分けられており、歪み/コンプモジュール、EQ/ワウモジュール、モジュレーションモジュール、ディレイモジュール、リバーブモジュールとなっており、あらかじめ記憶しておいたパッチを切り替える通常のマルチエフェクターとしての使い方はもちろん、コンパクトエフェクターのように個々のエフェクトのオンオフを切り替えるモードもあります。
クリーン、オーバードライブ、ディストーションが各2種類用意されており、そのプリセット内にコンプレッサーが内蔵されているタイプになっています。
特にディストーションの回路が中々使えるサウンドで、ディストーションⅠは芯のあるオーバードライブを更に歪ませたようなサウンドでバッキングからソロまで汎用性の高いディストーションで、ディストーションⅡはBOSSのDS-1を彷彿とさせるシャーシャー系のサウンドでパワーコードなんかにはピッタリの気持ちいいサウンドです。
オーバードライブはディストーションと比較するとやや使いづらくGAINがもう少し欲しい所だったのが残念ですが、クリーンサウンドにほんの少し歪みを足したい様な場面では重宝するかと思います。
EQは一般的な3バンドイコライザーに加えミドルの周波数を調整できるタイプになっており、歪みの種類の少なさを充分カバーできるほどの音作りの幅を広げてくれるかと思います。
MODはピッチシフター、トレモロ、コーラス、フェイザー、フランジャーと必要充分な種類で、この時代には珍しいピッチシフターが搭載されている点が特筆点です。
コーラスはレイトとデプスのみのシンプルさでアナログ感のある(デジタル回路だと思いますが)サウンドが気に入っています。
トレモロは一般的なレイトとデプスに加えて、ピークという珍しいコントロール系が備え付けられています。
これによってビンテージ風のふわふわした音からマシンガンのようなぶつ切りサウンドまで表現できる所が面白いです。
ディレイモジュールではモノラル、ステレオを選択でき、1000msまでのロングディレイが可能になっています。
良くも悪くも普通のデジタルディレイと言った印象ですが当時としてはBOSSのDD-3を凌ぐロングディレイが搭載されていることに驚かれたのではないでしょうか。
リバーブモジュールでは一般的なリバーブに加え、アーリーリフレクションという初期反射のみのリバーブというちょっと変わったものも搭載しており、これによって余計な残響は加えずに音の立体感を出す事が可能なので厚みの欲しいバッキングなどに重宝します。
またこのモジュールにもディレイが付いている点が素晴らしく、900msまでのディレイが使えます。
zoom 2020の惜しいところ
歪みモジュールに個別でボリュームがない
歪みのモジュールには一般的にゲイン、ボリューム、トーンがコントロール出来るものが多いですが、この機種の場合はボリュームがなく、マスターボリュームかEQのボリュームでしか音量を調整できません。
その為歪みモジュール単体ではブースターとしての使い方ができません。
トーンが貧弱
同じく歪みモジュールですが、トーンが0と1の2段階しかないのは少々辛く、0では音がかなりこもる為実質調整出来ないものとしてみる方が良いかもです。
ピッチシフターの追従性が悪い
当時この機種の目玉であったピッチシフターですが、古いマルチを使い慣れている自分でも遅延が気になるレベルで、実践で使うには中々骨が折れそうです。
コーラスのmixが欲しかった
mixコントロールがない為、薄くかける為には少々工夫が必要になります。
ディレイにトーンがあればアナログディレイっぽい事もできた
リバーブモジュールにはトーンがあった分、ディレイにも欲しかったなと感じました。
チューナーは搭載しておいて欲しかった
昔のマルチではたまにありますが一台で完結を目指すマルチエフェクターとして、必須で使用するチューナーがないのはつらいところですが、ポジティブに考えれば制度のいいチューナーを外付けできると思うようにします。
電池駆動しない
ACアダプターのみの駆動です。
総評:これから来ると思われるビンテージマルチエフェクターブームの波に乗れる逸材
マルチエフェクターは一般的に新しいもののほうが良いとされる風潮ですが、ここ最近古いマルチエフェクターを見直す動きがみられ、有名ユーチューバーの方たちもそういったことで昔のマルチエフェクターを取り上げる動画が見られます。
ただすべてのマルチエフェクターが見直されるとはいかないと思います。
というのも、一般的なスペックを比べた時に今のマルチエフェクターの性能には劣っているためそのデメリットを払拭するほどの何かがないとダメなのかなと思います。
個人的にそのブームの波に乗れるのは”歪みにアナログ回路を採用したマルチエフェクター”だと思います。
現行品でアナログ歪みを搭載したマルチエフェクターはありますが、かなりコンパクトエフェクター寄りの設計が多く今度はマルチエフェクターとしてのメリットを欠いているように思います。
そこでマルチエフェクターのメリットを活かしつつアナログの恩恵を受けている昔の機種に注目が集まるというわけで、
ここで紹介したPlayerシリーズに加え、BOSSのME-30、ME-5、ME-10 、ME-6、ME-8、BE-5、BE-5M、GT-5、GT-3あたりが注目されていくことかと思います。