マルチエフェクターとはコンパクトエフェクターのひとつで単体の機能をもつエフェクターとは異なり、複数のエフェクトが搭載されているものを指します。
値段は様々で一概には言えませんが、多くの場合単体でコンパクトエフェクターをそろえていく場合に比べるとコストパフォーマンスの面において優れており、エフェクターを購入しようとしているギタリストにおいて一度は購入を検討する対象になったのではないでしょうか?
しかし巷ではコンパクトエフェクターのほうが良いといった意見や、マルチエフェクターのほうが良いといった意見が飛び交い、どちらが正しい意見なのか分からなくなってしまう方も多いかと思います。
そこで今回はマルチエフェクター・コンパクトエフェクターのそれぞれの特徴・メリット・デメリットを紹介しますので、どちらを購入すればよいのかの参考にしていただけると幸いです。
そもそもマルチエフェクターとは?
冒頭でも少し触れましたが、マルチエフェクターとはそもそもどういうものなのかよくわかっていない方も多いかと思いますので参考までに説明させていただきます。
まずマルチエフェクターと対をなす存在なのが”コンパクトエフェクター”というもので基本的に一つのコンパクトエフェクターに対して一つのエフェクト(機能)を搭載されているものを指します。
例えばこの”BOSS SD-1”というオーバードライブがその例でこれは歪みという音の変化だけを加えるエフェクターになります。
一方マルチエフェクターとは一つの個体に数種類~数百種類のエフェクトが搭載されたものを指し、コンパクトエフェクターを使うギタリストは数種類のコンパクトエフェクターを組み合わせて使うことが多い中、マルチエフェクターは基本的に一台でその役目をすべてになえる機能を持ち合わせています。
この話を聞くと、一つ一つ集めていかなければならないコンパクトエフェクターに比べてマルチエフェクターのほうが手っ取り早くお買い得で悪い面がないように聞こえますが、それぞれにメリットとデメリットが存在していることを知っておく必要があります。
コンパクトエフェクターのメリット・デメリット
プロの現場でもよく見られるコンパクトエフェクターをずらりと並べたエフェクターボードを見たことがある方も多いのではないでしょうか?
そういった画像や写真を見たことがある人はマルチエフェクターは初心者用でコンパクトエフェクターは上級者が使うものなのだなと勘違いする方がいますが、決してそうではありません。
プロのギタリストでもマルチエフェクターをメインで使っているギタリストは多く、決してマルチエフェクターは初心者用というわけではないのです。
ではその使い分けはどのようにしているのか?
まずはコンパクトエフェクターのメリット・デメリットから紹介します。
メリット
多様な音の組み合わせができる
コンパクトエフェクターの種類はそれこそ無数のメーカーが無数のエフェクターを製造しています。
マルチエフェクターの強みは一つに様々なエフェクターが内蔵されている点ですが、それでも世に出ているコンパクトエフェクターをすべて搭載しているわけではなく、ほんの一部分にすぎません。
そのため、自己表現としてギターをしているギタリストの中にはマルチエフェクター内に搭載されている機能やエフェクトでは満足できず、各エフェクトを無数にあるメーカーの中から自分好みのものを見つけ出し、組み合わせていくことで自分ならではのアイデンティティのあるサウンドを実現できるといった点ではないでしょうか?
そもそもエフェクターというもの自体がコレクター性に富むもので他人が使っているエフェクターや新作のエフェクトに興味がわいたりと、ギター趣味という中でもエフェクターが好きという人種が一定数います。それほどエフェクター選びというのは奥が深く、楽しいものなのです。
そのため、そういったギタリストからは一つでオールオッケーといったマルチエフェクターは少々つまらなく感じてしまうのかもしれません。
ものとしてのクオリティが高い
一つに多くの機能が搭載されているマルチエフェクターと違い、コンパクトエフェクターは基本的に単体の機能しかありません。
しかし逆に言えば、その機能だけに命がかかっているわけなのでそのクオリティはお墨付きです。
また、デザインも凝ったものが多く、CDのジャケ買いのようにエフェクターを購入する方も少なくありません。
デメリット
出費が多くなる
コンパクトエフェクターは基本的に一つの機能しか搭載していないため、曲中複数のエフェクトが必要になった場合その都度新しいエフェクターを購入する必要があります。
しかも今後も使い続けるエフェクターであればいいのですが、奇抜すぎるエフェクトだとその曲以降全く使わなくなる恐れもあり、そういった点も踏まえてエフェクターを購入していかなければならないといったデメリットがあります。
機材トラブルに見舞われやすい
コンパクトエフェクターを複数使用する場合パッチケーブルといって、シールドの短いものをエフェクター間につなげていく必要があります。
この数が増えていくにつれて、断線や接触不良のリスクが高くなるのは言うまでもないことで、また各エフェクターへの電源供給に使用するパワーサプライや電池などの問題も含めていくと機材トラブルに見舞われる可能性というのはマルチエフェクターに比べると多くなってしまいます。
コンパクトエフェクター通しの相性があったりする
複数のエフェクターを組み合わせて使用することを想定されたコンパクトエフェクターでは悪い食べ合わせがあるように同時使用をしてはいけないエフェクターといったものは基本的に存在しません。
ですがエフェクターの接続順やインピーダンス(電気抵抗)、電源供給の方法などの点で本来の力を発揮できないことがあり、それを回避するためにはある程度の知識が必要になってきます。
マルチエフェクターのメリット・デメリット
昔はマルチエフェクターというと”数だけを寄せ集めた粗悪品”いった具合に質より量を体現したもののイメージでしたが、現在ではコンパクトエフェクターに匹敵するほどのサウンドクォリティをもつマルチエフェクターも数多く存在します。
しかし、そんな技術が発展していった今日でもコンパクトエフェクターの需要がなくならないのには理由があります。
そこで続きましてマルチエフェクターのメリット・デメリットを紹介します。
メリット
ハイコストパフォーマンス
マルチエフェクターを進めてくる人たちが声をそろえて言うのは、何といっても多くの機能が一つにまとめられたそのコストパフォーマンスでしょう。
通常マルチエフェクターに内蔵されているエフェクトをコンパクトエフェクターでそろえようとすると何十万~何百万もかかるところがわずか数万円で手に入るという点は非常に魅力的ではないでしょうか?
そういったコストパフォーマンスの良さから、初めはマルチエフェクターを購入してあれこれと搭載された機能に触れて勉強し、後々物足りない部分からコンパクトエフェクターへと移行していくといった流れになっているギタリストも多くいます。
運搬性
コンパクトエフェクターを複数持ち歩くとそれに伴いエフェクター専用のカバンを用意して機材がごちゃごちゃにならないようにする必要があります。
その点マルチエフェクターはそれ単体のみでの運搬になるため、非常にスマートで、ライブでの機材転換の際にも快適に準備&撤退ができることは非常に大きなメリットといえます。
機材トラブルの少なさ
マルチエフェクターはそれ単体での使用がほとんどのため、無駄にケーブルなどを使用せず、断線や接触不良、複数の電源供給による問題なども少なくて済みます。
また万が一トラブルが発生したときもその原因を突き止めやすいため、ライブやスタジオ練習においても、ほかのメンバーに無駄な時間を取らせる必要もなくなります。
コンパクトエフェクターには無い機能をがあるものも
コンパクトエフェクターのメリットを語る場で、マルチエフェクターにはない機能を搭載したエフェクターがあると説明しましたが、実は近年においてマルチエフェクターの中でも独自のエフェクトを搭載しアイデンティティを確立しているマルチエフェクターも数多くあります。
どこで使用するのか迷ってしまうような奇抜なエフェクターもありますが、何といってもコンパクトエフェクターでは見られないような”アンプシミュレータ”が一つの個性として確立しだしているなと思います。
FENDERやMASHALLなどの王道のギターアンプをモデリングしたコンパクトエフェクターは存在しますが、ニッチなモデルまではコンパクトエフェクターではなかなか見られないのが現状です。
その点マルチエフェクターに内蔵されているアンプシミュレータは初めて聞くようなアンプもモデリングされているため、そういったかゆいとも思ってなかったところに手を伸ばせるマルチエフェクターはデジタルならではの強みといえます。
デメリット
コンパクトエフェクター単体と比較すると高価
先ほどコンパクトエフェクターと比較して高コストパフォーマンスと説明しましたが、実のところは但し書きで、「複数のエフェクターを使用することを想定した場合」というのが付け加えられます。
もしあなたが1~2つのエフェクターしか使用しないのであれば、何百種類のエフェクターが搭載されたマルチエフェクターはただ大きくて重たい”無用の長物”となる恐れがあります。
マルチエフェクターは音色を変化させるエフェクター以外にもヘッドフォン端子やAUX端子、ドラムマシーン、ルーパー機能、チューナーなどと言った機能も搭載されているものが多く、このあたりの機能を使用する場合はたとえエフェクターを1~2つしか使わないギタリストにおいてもハイコストパフォーマンスであることは変わりないのかもしれません。
コンパクトに比べるとエフェクトの種類は限定的
コンパクトエフェクターは無限に買い足し、現在のエフェクターボードに付け加え、拡張させていくことができます。
それに比べるとマルチエフェクターはその中に内蔵されているエフェクター内もしくはメーカーからアップデートされた追加エフェクター分に限定されるため少々自由度という面では劣ります。
(といっても何百種類ものエフェクターがあったうえで不満が出てくるかは疑問ですが)
コンパクトエフェクターをほかで買って、マルチエフェクターと組み合わせて使用するといった使い方もあるためこのデメリットも一概には言えないものではありますが、その場合、上記で説明した運搬性や機材トラブルのリスク回避の面での恩恵は少なくなります。
一つの故障で全エフェクトが台無しに
コンパクトエフェクターでは一つのエフェクターが仮に故障したとしても、それを取り除けば何とかなります。
しかしマルチエフェクターの場合、すべての機能をデジタルで管理しているため、一か所でも故障すると全機能に影響するため、万が一の機材トラブルの場合致命傷となる恐れがあります。
特に怖いのが保存したデータが消えてしまうといったトラブルです。
近年ではそういったトラブルの対策として、PC内に保存データをバックアップとして残して置けるマルチエフェクターも増えてきていることから、昔よりはそのデメリットは軽減されては来てますが、それでも以前こういった不安要素は完全にはなくせないのが現状です。
新旧交代が激しい
携帯電話、スマートフォンなどのデジタル機器全般にいえることですが、こういった製品は年々新しいものが発売されており、多くの場合前作の機器よりも機能面が上回っています。
そのため、せっかく大枚をはたいて購入した最新マルチエフェクターも、次の年にはさらに多機能のマルチエフェクターが登場したということになります。
アナログ回路を使用しているようなコンパクトエフェクターはそういった点では強く、時代の流れに流されないロングセラーのコンパクトエフェクターというものが数多く存在しますが。多くがデジタル機器のマルチエフェクターでは残念ながら時を超えて需要があるマルチエフェクターというのはほぼ存在しないのが事実です。
操作が難しい
マルチエフェクターのメリットに多機能といった点を挙げましたが、これは逆に言うと多くの機能が詰め込まれすぎているという見方もできます。
そこまで多くのエフェクター、機能を必要としていないギタリストにとっては無駄な操作が多くなり、音作りに大きな弊害を生みます。
ちょっとした音色の変更に煩雑な操作を必要とするものは現場で時間のロスにつながるため、敬遠するギタリストもいる様です。
メーカー側もそういった点は把握し、何とか多機能さと操作性の両立をはかるため、大型ディスプレイにタッチパネルの導入など企業努力も見られますが、まだまだ操作の単純さといった面ではコンパクトエフェクターに軍配が上がりそうです。
最後に
いかがだったでしょうか?
マルチエフェクター、コンパクトエフェクターにはそれぞれ得意、不得意とする点があり、すべてのギタリストにこっちのほうがいいと一概に言えないものなのです。
今自分が必要としているメリット、避けたいデメリットなどを天秤にかけどちらが自分にとっての最適なエフェクターの種類なのかを自身で決める手助けになれば幸いです。