エフェクターを多用するギタリストなら良く使用すると思われるローランド社のJC-120で、巷では
”音に余計な癖がないからエフェクターやギターの個性が出る”
などと言われることが多いギターアンプです。
こういった無個性さがある意味エフェクターで音作りをするうえで都合が良かったりするので、現在まで愛されてきた機種なんだと思います。
しかし、各様々な場所でのスタジオ・ライブハウスに設置されているROLAND JC-120を使用してきてわかってきたことは、
”ROLAND JC-120 って個体差結構あるんじゃないか?”
という感想でした。
ここではそんなJC-120 の出音の変化について考えられるポイントを考察しながら、今後音作りをどうしていけばよいのかを考えていきます。
そもそもJC-120とは?
まずそもそもJC-120とはROAND社が販売製造しているエレキギターアンプで、ROLANDといえばエフェクター界の重鎮”BOSS”を傘下に迎えていることでも有名です。
もともとJC-120はキーボード用のアンプとして販売されていたらしく、そのため”DISTORSION”のつまみはギタリストが想像しているような音の変化がなく、イコライザーもギター用ではないフラットな出音の設計なんだそうです。
そんなもとはキーボード用のアンプですが、BOOWYの布袋さんなどのような名だたるギタリストの使用によりギタリストの中でもスタンダードなエレキギターアンプとして受け入れられるようになりました。
JC-120をメインで使用していくことのメリット
ギターサウンドの核となるポイントの一つに
というものが挙げられると思います。
アンプシミュレーター系のエフェクターはもちろん。トランジスタのアンプに内蔵されているモデリングや歪みエフェクターでさえ真空管アンプの歪みを目指した機種は数多く存在します。
そんななかJC=120はライブハウスやスタジオに設置されているアンプの中では少数派のトランジスタアンプで、真空管アンプのような歪みは表現できません。
ではそんなJC-120をメインで使用していくメリットとは何でしょう?
挙げられる点は以下のようなものだと思います。
・どこのスタジオ・ライブハウスにも設置されている。
・コントロール部がシンプルで操作しやすい。
・真空管アンプのような取り扱いにくさがない。
・個体差が少ない。
理由はこのあたりになってくるかと思います。
まず、一番に”どこにでもおいている”という点が最強な理由だと思います。
ギターアンプはそのメーカーや機種によって大きく癖や特徴を備えています。
そこでギタリストはできるだけ練習と本番で使用するアンプを同じギターアンプに統一し安定した音色を実現していきたいものなのですが、ギターアンプで有名なFENDERやMARSHALLアンプをおいているスタジオやライブハウスは数あれど、その型番まではその場所ごとでそれぞれ異なる場合が多々あります。
その点、ROLAND JC-120はトランジスタアンプならではの低コスト&高耐久力&メンテナンスフリーな性能から、ほぼすべてのスタジオやライブハウスに設置されているので安定した音作りをしたいギタリストも安心してJC-120を使って音作りができるというわけです。
また、シンプルかつ必要最低限なコントロール系を備えているため、音作りがしやすくその幅広さも真空管アンプに比べると柔軟な対応ができるのも魅力の一つです。
真空管アンプの中にはEQが備え付けられてなかったり、0か100かの調整でなければ大した音の変化が感じられないようなものまであります。
そして真空管アンプはその特性故、扱いに少々気を遣う場面も多々あり、真空管のへたり具合や温まり具合などで日ごとに音色が変わったりします。
また取り扱い方を間違えると故障の原因になります。
JC-120でも間違った扱い方をすれば故障の原因にはなりうるのですが、トランジスタアンプの特性ゆえ、真空管アンプのそれと比較するとその点の堅牢性は段違いです。
※階段からjc-120を落としてしまっても何事もなく使用出来たという話も聞いたことがあるくらいです。
そして最後に挙げられる理由に”アンプごとの個体差が少ない”といった点なのですが、長い間ギタリストとしてJC-120を使用してきましたが、どうもこの点だけは少し疑問に感じることがありました。
JC-120の個体差とは?
まず初めに補足しておくと、個体差があるといっても真空管アンプほどではないといった点だけご了承ください。
もともと消耗品である真空管を使用していないトランジスタアンプはそれゆえ個体差が少ないといわれることが多いのですが、今まで自分が使用してきたJC-120の中で出会った個体差を感じたものの症状に
・異様に音が小さいor大きい
・ハイが出すぎor出なさすぎ
といったものが多いような気がします。
なぜこのような事態が起こるのか?
まず個体差ではない問題から考えられる点を挙げると
・スタジオなどのその空間による問題
・ギターアンプの設置方法&位置
が考えられます。
特に設置方法&位置は重要で、もともとJC-120はオープンバックの構造をもつギターアンプでこれによって、余計なローは減らし出音の効率を上げる構造になっているのですが、このアンプを壁にくっつけるように設置してしまうとそのオープンバック構造の部分が壁によってふさがれ、クローズドバックのアンプのような出音に変化してしまう症状が起こります。
また、JC-120は移動させやすいように底面にキャスターが備え付けられている場合があります。
その場合、地面に接している面が少ないため、低音の振動が地面に伝わらずハイの勝ったサウンドになりがちです。
なのでそのサウンドが気に入らない場合はキャスター付きのJC-120の場合本体を横向けにして底面を地面にべったりとつけるような状態にするといいでしょう。
台座などが設置されている場合もそれと同じ症状が出ると思います。
もし、上記のような対策が取れない場合でもこのような環境による特性を理解しておけば、JC-120のもつEQによってその部分を補完する形で融通をきかせていけば場所ごとの誤差は減らせるかと思います。
ただ、自分が感じた個体差はそれによるものではなく
他に考えられる点で言うと
・機材、スピーカーの劣化
・修理や改造によるパーツの違い
・製造年による個体差
などでしか考えられないようなものでした。
いくらトランジスタアンプといっても永久的に劣化がないわけではありません。
スピーカーコーンの劣化なのか音が妙にしまりがなかったりすることがあります。
あとはメンテナンスの段階で色々な手が加えられていたり、そのJC-120が寄贈品だったりすると前オーナーによるスピーカーの交換が行われている場合もあるようで、見えないところで異なったパーツを使われていることもあるようです。
最後に製造年による個体差ですが、JC-120には大まかにスイッチがトグルスイッチの初期型とスイッチ式の現代型があります(細かく言うともっとあるようですが)。
JC-120を取り扱った本などにはのその他異なる点を色々解説しているものがありましたが、自分個人としてはこの製造年のバージョンによる個体差に明確なものは感じませんでした。
さいごに
個体差が少ないとされるJC-120ですが、やはり多少の差はあれど完全に同じというわけではなくそれぞれに個性を感じるものが存在するのかなといった印象でした。
ただこれはその日の自分の耳や感性、一緒に音を合わせるメンバーの出音によっても大きく左右される問題だと思うので、個体差だけでなくその日その場面ごとに柔軟な対応をもっていつもと変わらないギターサウンドを実現して良ければと考えています。